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熱帯夜
たまにまともな時間に寝ると、結局眠れないのか起きてしまって目が冴え冴えなので、しょうもない昨日の出来事を書きたいと思う。


昨日、京浜東北線に揺られていた私は、赤羽に呑みに行くだけなのに大荷物だった。そのまま朝まで雪崩れ込んだり、沿線の人宅に泊まったりして、そのまま翌日出勤する可能性もあったからだ。

なので、ノートパソコンなどを入れたカバンに入りきらなかった、ギャツビーのスーッとする顔を拭くやつと身体を拭くやつ、先週発売のモーニング、漫画単行本、世界文学全集を黒いビニールではないカサカサした素材(何て言うのか忘れた)の袋に入れていた。

何とも奇妙なトリデンテだが、モーニングは買ってすでに読み終わっているのだけれど、読み終わったのは職場の人も読むのでそれ用に、漫画の単行本は、赤羽でお会いするのがその著者の方なのでサインをいただきに、そして世界文学全集は昔読んだことがあってもサッパリ忘れているだろうからと、今読み返すと色々あるだろうと、文学少女であった母の蔵書から適当に抜いた、といった次第だ。

で、結論から言ってしまうと、私はその袋を棚(最近の車両は網じゃないのね)に置き忘れたまま赤羽駅で下車してしまった。すぐに気づいて駅員さんに荷物の詳細を伝え、終点の南浦和で回収できたらば電話連絡をいただけるとのことで、すでにそのせいでお待たせしてしまっている待ち合わせ場所に急いだ。

民主党のマニフェスト紹介のマイクが激しく、笑っちゃうくらいに電話の会話がサッパリ伝わらない中、どうにか携帯を耳に当てている方はお一人だったので、待ち合わせしていた先生に会うことができた。

そしてホルモン焼きをメインに推している、上杉謙信の車懸かりの陣を空中から俯瞰しているかのような不思議な内部設計の飲み屋に入り、車懸かりの陣説を援用するならば上杉軍が目指す信玄の本陣の位置に座って呑み始めた。

しばらくすると電話が鳴った。パクられるような袋ではないので、まず無事の生還を確信していたので、駅の方であろうとは思っていたのだが、ここで実は別種の緊張が私を襲っていた。

なぜならば、カバンなどはともかく、そのような袋の忘れ物は他にあまりないだろうと思いつつも、特に詳細をつき合わせることなくこれだ! となるようにできるだけ詳細に中身は伝えたのだけれど(車内で読んでいたので、世界文学全集は外箱だけ、だとか)、仮に職務上、中身をひとつひとつ読み上げて確認しなければいけないのであれば、私はとてつもないカルマを駅員さんに負わせることになるからであった。

まず、モーニングも、島耕作が大町久美子と向き合っていて、「東京ミッドラブ」というアオリがつけられているCOOL((C)許斐剛)すぎる表紙で、ある種の人々はそれだけでも笑ってしまう可能性があるのだが、問題は残り2冊である。

実は、このとき私がお会いしていたのは、ギャグ漫画家ルノアール兄弟の原作担当の左近洋一郎先生で、既刊5冊の中からどれにサインをいただくべきかと悩んだ末の私のチョイスが、『ルノアール兄弟の愛した大童貞』であったのだ。

声に出して読みたい日本語ではあるが、初心者には決してオススメできないし、そんなとき、過酷過ぎるミッションを公共の空間でCOOL((C)許斐剛)に回避する「DDT」という略称(別にオフィシャルな呼称ではないのだが、ルノアール兄弟ファン同士であれば、「Dichloro Diphenyl Trichloroethane」や「デンジャラス・ドライバー・テンリュー」ではないことを一発で分かり合えるはず)も駅員さんにはよもや浮かぶまい。

そしておまけに、世界文学全集が『魔の山』と『ヴェニスに死す』所収のトーマス・マンであったのだ。よりにもよって、「マン」だ。またもや声に出して読みたい日本語で、我ながら狙ったような組み合わせで酷すぎる。他の文豪ならもっとマシだったか、といえば誰でも面白い気はするのだが、『魔の大童貞』や『大童貞の山』、『ルノアール兄弟の愛したマン』、『トーマス・マンの愛した大童貞』、『大童貞に死す』、『ヴェニスにDIE童貞』等々、もうどう料理しても強制的に珍味にカテゴライズされてしまう組み合わせではないか。


まあ結局、中身の声出し確認はされなかったのだけれど、その後店を出た我々は、互いの魔の山比べを行うべく、駅前のサウナに雪崩れ込んだのであった。

* * * * * * * * * *

友よ! 愛すべき読者よ!
ここで筆者から断りを入れねばならない!
話が終盤に来て筆者の情熱がたかぶってしまったのだ!

そこでどちらのハンス・カストルプがヴェニスに死んだのかについては、次回に続けさせてもらいたい! また会おう!!
(『ルノアール兄弟の愛した大童貞』1巻参照)

* * * * * * * * * *

(続かない)

    
はてなブックマーク - 熱帯夜 | 11:14 | 戯言 | comments(0) | trackbacks(0)
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