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ポケットの中(が原因)の戦争 3
 男は子供たちがこんにゃくを皆食べ終わったのを確認して、再び話し始めた。くちばしは外している。
「子供たちが食べたこんにゃくは、他人の話す内容が理解できないものでも、それを食べれば頭の中で翻訳されて理解できるようになるものだ。とりあえず中学生以下としたが、これから話す内容を理解できない人間がいた場合、その人間は消えてもらうことになる可能性がある。失礼な物言いになってしまうが、ここにいる高校生以上の者で、自分の理解力や知識量に自信が無い人間は自己申告して欲しい」
 誰かが立ち上がって叫んだ。
「ちょっと君、消すってのはなんだ。冗談でも言っていい事と悪いことがあるぞ」
 すると、男は再びくちばしを口につけて「黙れ」と言った。すると、その人は押し黙ってしまった。
「ちょうどいい、先程から皆さんが不思議に思われているであろうこのくちばしは、『ソノウソホント』というもので、これを口につけて話したことは全部実現するという物だ。それが嘘で無いことをお見せしよう。君、そこで適当に踊ってみてくれ」
 その人が踊りだした。ざわめきが場を支配し始める。男は続けて「アントルシャ・ディスをやってくれ。君が知っている必要は無い」と言った。するとその人は信じられないくらい高く飛び上がり空中で足を10回交差させた。最早体育館は狂騒状態になった。僕も何が何だかわからない。と言うよりは、何処から僕は夢を見始めたのか、と真剣に考えていた。
「静かに」
 男が再び言った。皆が静かになった。勿論、男の口にはくちばしがついていた。
「ちなみに、アントルシャというのは、今ご覧になって理解した方も多いとは思うが、バレエにおいて、ジャンプした最中に簡単に言ってしまえば空中で足を交差させるステップのことで、ディスというのは10ということだ。ニジンスキーという伝説のバレエダンサーがこのアントルシャ・ディスをしてみせたそうだ。勿論私も実際に目の当たりにするのは今回が初めてのことだ。」
 男はくちばしを外しながら話し、自分の足がどうなったのか理解できずに目を白黒させている飛んだ(飛ばされた?)人に目をやった。
「決め付けるのは悪いが、当然彼にはそんな技を行ってみせる身体能力などありはしない。しかし、この『ソノウソホント』をつけて言った以上、必ず、それは起こらないわけにはいかない。これからお話しする我々の目的をご理解いただいた上で協力的な行動をとっていただけない方には、これをつけて、『消えろ』と言ってしまえば、必ずその対象は消えてしまう。皆さん、おわかりいただけたかな」
 僕は、自分に言い聞かせるように「これは夢だ」と何度も口の中で呟いた。そうに違いない、と。ほとんどの大人が立ち上がってこんにゃくを貰いに行っている。この町はこんなに馬鹿な大人ばっかりなんだな。どうりで毎日がつまらなくってしょうがないわけだ。
「おい、おい、ヒロシ」
 父さんが僕の肩を叩いていた。どうせならもっと強く叩いてくれよ。夢から早く覚めたいんだ。
「もしもってことがあるからな、良くわからないが父さんと母さんもあのこんにゃくとやらを貰いに行ってくるよ」
 父さんの顔が引きつっていた。それを聞いた僕の顔も引きつっていたかもな。なんて悪夢だ。
 でも、僕はもうすでに気がついていた。いつでも一番最悪な悪い夢は現実の中にあるってことを。強く爪を突きたてられた僕の太股から垂れた血が、床に落ちていた。
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