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ポケットの中(が原因)の戦争 2
 あの日、僕は自分の部屋のテレビで野球を見ていた。ちょうどイニングが終わってテレビがコマーシャルに入った瞬間だったので、僕は何か新しいかたちの大掛かりなコマーシャルが目の前に流れているのか、と我が目を疑わずにはいられなかった。しかし、何度目を擦ってみても、部屋にいたはずが、確かに僕は体育館にいて、おまけに周りにはお父さんもお母さんも、近所の人も、とにかく知っている顔ばかりが集まっていた。「キャー」という叫び声が聞こえた、その方向を見ると、ノビタのクラスメイトであるミナモトシズカが裸でうずくまっていた。風呂にでも入っていたのだろう。気が付けば、シズカ以外の人たちも、めいめいが困惑の表情を浮かべ、大声や悲鳴も聞こえ始めたその時だった。
 「静かにしろ」
 その声には、不思議と全員を黙らせる力があった。見ると、その声の主は鳥のくちばしのような滑稽なものを口につけていた。軍服のようなものを着ており年齢は40代くらいに見える男だ。周りに同じ服を着た男たちを従えている。しかし、そのどう見ても可笑しいくちばしもどきを笑う人は誰一人としておらず、沈黙は依然として場を包み込んでいた。
 「突然このような理解できない事象に遭い、皆さんは大変困惑しておられることと思う。しかし、今しばらく静粛にされて、私の話を聞いていただきたい」
 男がくちばしもどきを外して話し始めた。すると、少年が1人立ち上がった。あれは確か、近所でも有名なガキ大将のゴウダタケシだ。
 「おじさんさー、師匠とかこんにゃくとか制服の話を聞いてくれとか言われてもわけがわかんねーよー。」
 すかさず腰巾着のホネカワスネオが立ち上がる。
 「もう、ジャイアンったら。師匠じゃなくて事象、こんにゃくじゃなくって困惑、制服じゃなくって静粛だよ」
 「バカヤロー、スネオ。ウチの店にはこんにゃくしかおいてないぞ、なんだよこんわくって」
 すると男が2人を手で制して、
 「いや、正に君の言うとおりこんにゃくが話に関係しているんだ」
 話しながら、男は再びくちばしを口に付ける。
 「中学生以下の子供たちは皆こちらに来て欲しい。そして、今から私の部下である彼らがこんにゃくを配るので、それを食べてくれ」
 すると、僕の足はその発言を訝しがる間もなく男の方に向かっていた。どう考えてもおかしいのに、僕は言われるがままに、男の部下たちが配ったこんにゃくを受け取り口に放り込んでいた。僕も、クラスメイトたちも、タケシもスネオもシズカも、誰1人として文句を言わずに、だ。
はてなブックマーク - ポケットの中(が原因)の戦争 2 | 01:31 | フィクション | comments(0) | trackbacks(0)
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