<< ホント面白いなNHK | TOP | 亀井氏の勝利を >>
さして若くもないウェルテルの悩み
仕事をしていて、凄いアニメ声のお客様がいたんだ。もの凄くね。僕ははっきり言ってアニメ声は苦手なんだ。しかし、もって生まれたものに対して嫌悪を抱いては始まらないだろう?
例えばロリコンに生まれてしまった男がいたとしよう。彼が実際に幼女に性的な悪戯をしてしまったら、それは断罪されるべきだ。しかし、法的にも道義的にも許されない対象に対して性的興奮を抱く身体に生まれてしまった彼が、少し澱んだ眼で歩いている可愛い女子小学生を見てしまう、そんな程度なら、そのシチュエーションはそりゃあ気持ちの良いものではないが、僕は決してそれを蔑んだりはしない。むしろ普通の性的嗜好に生まれることの出来た自分の幸運に感謝するさ。ちょっときつく縛った縄の痕が好きな程度のね。
だから僕は最初は普通に我慢していたんだ。でもね、そいつは天然じゃなかった。計算だったんだ。語尾に「にゃー」とか「ナリー」とかつけてるんだよ。おいおい、ここが戦場だったらテメエとっくに俺にウォールオブジェリコ(ただの逆エビ固め)くらってるぞコラ?お前の何処に猫の耳があるんだボケ?お前の何処がコロ助だゴラァ!!ってもう僕はむかついてむかついてしょうがなくってね。挙句の果てにそいっつったら他の人に振られた時に答えに窮して「うぐぅ」だってよ。「うぐぅ」って確かエロゲーのヒロインの口癖とかだろ?おいおい勘弁してくれよ?ってさすがに洗い物をする手も止まったね。というか同僚の人たちも気の毒だと思わないかい?俺らがそんなので萌えると思ってるの?とかうざったく思っている人が絶対いると思うんだがねえ。逆に彼女が男への媚びが全くゼロで、完全に自分が好きなだけでそう喋っているっていうんだったらそれはそれで大したものだけどね。
でも僕は、お店に来てくださっているお客様には本当に感謝しているし、出来るだけステキな思いをして返っていただきたい。なのに僕がお客様に対して怒りの感情を抱いているのは悲しいことだよね。だから僕はちょっとした魔法を自分にかけるのさ。僕はアニメ声が好きだったんじゃなかったかな?って軽い自己催眠をね。好きって思うのはさすがに気が引けるのでその程度でさ。そしてちょっとした押し問答が始まるんだ。

僕はアニメ声が好きじゃなかったっけ?→いや、でも今こんなに嫌悪感を抱いていたじゃないか。→でもそんなことないんじゃないか?→ほら、だんだんそんなに腹が立たなくなってきたんじゃないか?→いや、でもやっぱり腹が立つ気がするんだけど。

そんな感じで。その程度でいいんだ。明確な怒りさえ己の内に宿らなければ、その内そのお客様も帰られて1日の仕事も終わる。そうしてからアニメ声にむかついていたことに気付いたところで怒りをぶつける対象のお客様はもういないんだから。
僕は、仕事中に限らず、何かよろしくない感情を抱いてしまいそうなときは、無理矢理その気持ちを押し込めるようなことはしないんだ。だって怒りって即物的なものだろう?自分の素が出るんだ。自分の素直なところがどうしようもなく怒りを抱いてしまうってことは、もうそれはどう深く考えても自分にとっては怒りを抱くものでしかないんだよ、よっぽどの誤解で無い限り。だから僕はその感情がその後で自分にとって不都合なものになりそうなときは、それを我慢するのではなくって、そもそもそうじゃないんじゃないか?って自分を勘違いさせる。これは結構効果的な鎮火方法だと思うんだ。

ただ、これにも問題があってね。これをあんまりにも頻繁に続けていると、時々本当の自分がどれかわからなくなってしまうんだ。余りにもたくさんの自分がそこにいて。
…なあ、小林くん。もし僕が怪人二十面相だったらどうする?
はてなブックマーク - さして若くもないウェルテルの悩み | 03:52 | フィクション | comments(0) | trackbacks(0)
コメント
コメントする










この記事のトラックバックURL
http://diary.clue-web.net/trackback/275425
トラックバック