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Do You Ever Dream?
内省系ヒップホップのEpic & Nomadを聴いていて、ふとKICK THE CAN CREWやRIP SLYMEがイカちいヒップホップ愛好家や実際にやっている皆さん方の一部にDisられていた頃のことを思い出した。

大雑把に言って、歌ものヒップホップに括られるこの2組。そもそもが、トラックのセンスがジャンル云々抜きで圧倒的にポップでセンスが良かったりするので、そういう意味でももうポップ・ミュージックと言っちゃっていいじゃないかと個人的には思っているし、実際にだからこそあれだけ売れたのだとは思う。

ただ、「こんなのヒップホップじゃねーよ」みたいに言われるだけならいいのだけれど、それに加えて「俺たちが、乃至は俺たちの好きな○○が、リアルなヒップホップだ」的な物言いには非常に辟易とさせられた。

なぜかと言えば、どこら辺がリアルなのかさっぱり分からなかったからである。個人的には「スイーツ」よりもよっぽど「(笑)」をつけてやりたい。

例えばそういう人たちは(別に嫌いなわけではありません、あしからず)NITRO MICROPHONE UNDERGROUNDや、そのメンバーの作品群はヒップホップとしてOKだと考えているとしよう。で、それは別にいいんだけど、そういうのを評するのに、凄くリアルリアル言ってた気がする。気のせいだったらすいません。キモヲタの被害妄想です。


しかし、以下そうであったことにして話を進めてしまうが、この言葉をタイピングするだけで何だか気恥ずかしいのだけれど、仮にNITROなんかが日本のハードコアヒップホップだとしよう。

で、そもそも、日本でハードコアヒップホップが成立したとすると、それが優れたものであればあるほど、別にそれってリアルじゃないと思うのだ。ストリートが云々と言ったところで、日本でどのラッパーが撃たれて死んだのかと。LUNCH TIME SPEAXのDJ DENKAがしょーもない理由の傷害で一昨年パクられたけど、僕は逆に日本の等身大のリアルって、逆にちょうどこのくらいじゃないかと考えている。

もちろん日本でも、血生臭い若者の血流しまくり、法犯しまくりの青春もあると思うのだけれど、そういう人たちは格闘技イベントのTHE OUTSIDER的な方に行くのが基本線ではないだろうか。ギャングスタ・ラップやってる本物のワルの日本人ラッパーって、まあいないだろう。でも、インテリヤクザ風の本当に悪そうな2〜30代は結構いるよね。

そもそも碌なロックバンドなんかよりも、日本のヒップホップシーンって、友情の繋がりとかがバッキバキに目立っていると思うし、ビーフ合戦になることもないわけではないけど、正直基本良い人ばっかりじゃない? K DUBさんなんてヤンキー先生よりよっぽど良識人だろ(笑)!!

いや、当然悪者じゃないと「リアル」なヒップホップができない、と言いたいわけではないのだけれど、単なる「ヒップホップ」はともかく、ハードコアとかギャングスタが生まれてきた背景には、社会的な問題やどうしようもない差別だとか貧困だとか暴力だとか、もうそれをすることでしか昇華できないありとあらゆる鬱屈があったからだと思うんだけど、渋谷を腰パンでのしてる兄ちゃんたちに、どれほどそれがあるのだと、そして、はっきり言ってないだろ、と僕は思っているわけで。

だから、日本の上質なハードコアっていうのは、アメリカのハードコアのスタイルに憧れ、愛好したDJやラッパーが作り上げた、それに非常に似た空気を纏ったヒップホップミュージック、っていうことになるんだと思うのだ。で、それって、別にリアルでも何でもないだろと。

仮に、渋谷の路上の空気をリアルに反映しているんだ――というトラックやフロウがあったとして、それって、どう考えても、そこまでドープなものにはならないでしょう。少なくとも、キックやリップをリアルじゃねーと鼻で笑えるようなものじゃないだろう。


と、ここまで書けばもう言うまでもないことだろうけど、僕は、むしろ、日本の空気を「リアル」に反映していたのは、キックやリップじゃないのかと思っている。で、それをヒップホップと呼ぶのに問題があるなら、別にラップしてるだけの良質なポップ・ミュージックでいい、と個人的には思うのだ。国ごとに色があって当然だし、全然ヒップホップでいいと思ってはいますけどね。

そして、さらに言うなら、スチャダラパーのほうがもっとリアルだと思っているし、そういう子たちは、ダボダボの服着てアクセじゃらじゃらつけてる子たちを一番敵対視しているだろうから、そこでマイクを手にしてフロウを決めてやろうと思う若者がいないだけの話で、もっと病んでいる――ここでやっと最初に戻るわけだが――Epicみたいなヒップホップこそが、日本人にとっての真にリアルなヒップホップたりえるんじゃないかと思うのだ。

神聖かまってちゃんのの子なんて完璧と思うのだけれど、彼は今のところロックバンドをやっているのでしょうがない。ただ、彼のような抑圧の塊みたいな人が、マイク1本で、いかにもなB-BOYとフリースタイルで勝負してボコボコに負かしたりでもしたら、死ぬほどかっこいいじゃないか。っていうか、そういうのがヒップホップじゃないのかね? ダボった服なんてデブ以外の日本人にゃ合わないじゃない。ちっともリアルじゃないよ。



基本的に、形から入るのは全然悪くないと思うんだけど、やはり↑この↑動画のいとうせいこうを見ていると、そういう若い子たちは、形を真似ることに執心するあまりに、自分が同化しようと試みているものが、「なぜその形になったのか」ということに対する考察が徹底的に欠けていると思わざるをえない。っていうか、その考察をする必要性をまるっきり感じていない次元――と言うべきだろうか。

で、オリジネイターの1人であるいとうせいこうは、「ヒップホップ」を日本でやろうとして、それに何が必要か、ヒップホップをヒップホップたらしめているものは何か、ということを考えに考え抜いてやっているから、この曲のリリックが生まれているわけだ。

そもそも、そういうことを考察する必要性のあるなし以前に、教養はあればあるほど基本的には良いに決まっているわけで、手塚治虫も漫画が上手くなるには漫画以外のあらゆる表現・芸術に触れることを推奨しているし、いとうせいこうも、

http://www.bounce.com/article/article.php/5666/ALL/

にて、

僕はポエトリー・リーディングってわかりやすく言ってるけど、ほんとは演説してるつもりなわけ。演説って、明治維新からこっち、いろんな人たちがやってるわけで。〈婦人に参政権を与えろ〉とかさ、〈全国民が等しく参政権を持つべきだ〉とか。アフロ・アメリカンがやってきたことを日本でもやっているんだよ、明治/大正期に。全共闘時代にはたくさんの学生が演説し、三島由紀夫は右翼の立場から演説し、国会でいろんな人がいろんな演説をし……って、そのしっぽに80年代ヒップホップが乗っかっていただけだって認識が俺にはあるから。ヒップホップだけ聴いている人には、まったく負ける気がしない。聴こえるものが違うんだと思う。僕には意味が聴こえるから。意味のないラップに俺は興味を持てないし、心が動かない。政治的なポエトリー・リーディングとか歌とか、“ヒップホップの初期衝動”とか。どうやって聴いた人に意味を届けるのか、聴いた人の脳のなかに俺が伝えたい色とか形とかがどうやったら届くだろうかって。もちろん全部はできてないですよ。ただ、そういう気持ちでやっているからさ。〈あれ、こっちにもなんかヒップホップっぽいものがある〉とか、その〈気付き〉がヒップホップなんでしょ。宇多丸にも言ったことだけど、発明がヒップホップじゃん。だから、インクスティックで指を鳴らすだけでリハになることに感動したんだよ。

と言っているわけで。

別に、無理に勉強とかせんでも、カッコひとつとっても『WOOFIN'』や『Samurai magazine』しか読んでない子のラップよりは、彼女の読んでる『装苑』も見てるよ、ってラッパーがいたら、絶対そっちのほうが聴いてみたいよ、少なくとも僕はね。

まあ、そこら辺に関しても先述のテキストで、いとうせいこうが、

それは〈YOU自身がやってくしかないんじゃないか〉と思ってたし、のちのちBボーイ風の人がたくさん出て来たことに対して、〈俺が好きなヒップホップじゃなくなってんじゃん〉って思ってた。黒人のふりをしている日本人が増えてきたでしょ。俺のヒップホップってそういうのじゃないから。ヒップホップのアイデアを使ってこういう編集をしようとか、ヒップホップとインターネットがいっしょになったらこういう機会があるんじゃないかって一人でやってたし。型通りのものだったら、本気で型をやってる古典芸能のほうがおもしろいじゃんと思って、古典芸能を習ってもう十何年経つし。ただ、最近また俺が好きなヒップホップにもエリアができてきたんだよね。あんまりにもみんなが同じ方向に偏っちゃったんで、そこからはぐれた連中が、スペースを作っていったわけだ。それこそサイプレス(上野)とかが。92年くらいはその余地さえなかった。でも俺にとって格好いいヒップホップってこういうもんだから。俺は格好いいことしかできないよ、もう。

と一刀両断しているのですが、本当に、黒人の真似事じゃないリアルなヒップホップを――っていうかこれ、文句言ってるんじゃなくって、ただもっと聴かせてくれ! と言いたいわけで。

で、あんまり気持ちいい話じゃないけど、今の日本で本当にリアルなもの、所謂イルでドープな(笑)ヒップホップっていうものがあるとすれば、それは本当に聡明な――それこそいとうせいこうやECDであるとか――人が考えに考え抜いて作り上げたものか、ふとしたきっかえで自殺してしまいそうなエッジの上でギリギリ生きているようなガチなメンヘルの子が、聴いてるだけで震えてきそうなトラックに載せた、マンドラゴラ抜いたときの悲鳴のようなラップとかがそれにあたるんじゃないかなあと思っているわけ、

というだけの話が酷く長くなってしまいましたね。お目汚し失礼いたしました。

  

JUGEMテーマ:音楽

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