2006.10.24 Tuesday
体育館にいたほぼ全ての大人たちにこんにゃくが行き渡り、食べ終わってから、男は未来の世界についての話を始めた。言っていることは理解できるけど、それでも理解できなかった。22世紀?冗談だろ?なんで覚めてくれないんだ、この悪夢は。これが現実なら、現実から逃げ出したい気分だった。男は話し終えた後、「質問があれば全て受け付けたい。何か聞きたいことがある方は、静粛に挙手をお願いしたい」と言った。
質疑応答のコーナーの結論を要約するとこうだ。
今後奴らが行う活動に僕たちが巻き込まれることはない。
僕たちはこれまで通りに普通の生活を続けていけばいい。
奴らやドラエモンの存在・活動は一切漏らすことは許されない。
それをした場合には存在を消されることになる。
それをすることのみを監視することの出来る道具でここにいる全員が今後管理下に置かれることになるが、カメラのようなものではなくプライバシーが一切傷つけられることはない。
ノビノビタはドラエモンの本来の目的を知らないので、ドラエモンが彼と共に普通の日常を過ごすために、ドラエモンが町の中を外出することがあるが、ここにいる人以外の目に入ることがないように、ノビノビタだけはカメラで監視されている。
監視されることに対する異論は噴出したけど、結局やつらに黙らさせられることになった。その道具は禁止ワードを設定して、ターゲットに指定した人間が禁止ワードに係わる事象を伝えようとすると、それがすぐに奴らの元に報告されるというもので、実際にその様子を奴らが実践して見せたのだけれど、文字を書いたりしても報告される様を見て、それはカメラじゃないのか、とたくさんの人が奴らに詰め寄った。けれど、結局奴らの22世紀のテクノロジーを説明するのは不可能だという言い分を信じるしかなかった。実際に理解できるはずがないのだし、仮に、もしあの道具がカメラだったところで、僕たちにはもう、他の選択肢など残されていないのは間違いなかったからだ。死ぬことを選ばない限りは、僕たちは風呂に入ればトイレもするし、独り言で誰かの悪口だって言いながら、生きていくしかないのだから。
そして最後に、僕の同級生であるハスミサヤカが手を挙げた。
「質問してもいいですか?」
「どうぞ」
「存在を消される、というのはどういうことなのでしょうか?殺されるということですか?」
「殺されるというのとは少し違う。存在そのものが、元からなかったことになるのだ。」
「なかったこと、ですか?」
「そうだ。禁止ワードを他人に伝えようとする人間を発見したら、私はソノウソホントを付けてこう言う。『○○の存在は消える』と。すると、瞬時にその人間はこの世から消え去り、その人間に関する記憶や、存在を示す物もこの世から消え去ってしまうのだ」
男はあらかじめ用意していたのか、新聞を懐から出して広げ、ある記事を指差した。
「多くの皆さんは、この事件をご存知だろう。2ヶ月前に起きた1家6人が惨殺された事件だ。この犯人は未だ捕まっていない」
男はくちばしを口に付けた。
「この事件の犯人の存在は消える。そして、ソノウソホントによって消えたことを、ここにいる人間だけが知っている」
くちばしを外して男は続けた。
「これで、皆さんは今起きたことを知っているが、世界はすでに犯人が元からいなかった世界になっているのだ。新聞をもう一度良く見て欲しい」
もう、驚く感情すら起こらなかった。さっきまで、事件を報じていたはずの紙面が、『特集 パンダが立った!』になっているのだ。誰もが最早驚きの声を上げることもなく押し黙っていた。
「おわかりいただけたかな?お嬢さん」
「ありがとうございました。それと、もう1つ伺ってもいいですか?」
「どうぞ」
体育館中の視線を集めても身じろぎもせず、サヤカは言った。
「そのくちばしを付けて言ったことはどんなことでも実現されるんですよね?」
「ああ、どんなことでも、だ。正直なところ、これは22世紀でも信じられない力で、セワシ博士のとある実験中に偶然に発見されてしまったものなのだ。こんな道具があることを知っているのは22世紀でも数えるほどしかいない」
すでに2人の声以外は沈黙が支配している体育館が、サヤカのその質問によって全てが凍りついたかのような静寂に覆われた。
「じゃあ、どうしてそれを付けて『世界が平和になる』と言わないんですか?」
質疑応答のコーナーの結論を要約するとこうだ。
今後奴らが行う活動に僕たちが巻き込まれることはない。
僕たちはこれまで通りに普通の生活を続けていけばいい。
奴らやドラエモンの存在・活動は一切漏らすことは許されない。
それをした場合には存在を消されることになる。
それをすることのみを監視することの出来る道具でここにいる全員が今後管理下に置かれることになるが、カメラのようなものではなくプライバシーが一切傷つけられることはない。
ノビノビタはドラエモンの本来の目的を知らないので、ドラエモンが彼と共に普通の日常を過ごすために、ドラエモンが町の中を外出することがあるが、ここにいる人以外の目に入ることがないように、ノビノビタだけはカメラで監視されている。
監視されることに対する異論は噴出したけど、結局やつらに黙らさせられることになった。その道具は禁止ワードを設定して、ターゲットに指定した人間が禁止ワードに係わる事象を伝えようとすると、それがすぐに奴らの元に報告されるというもので、実際にその様子を奴らが実践して見せたのだけれど、文字を書いたりしても報告される様を見て、それはカメラじゃないのか、とたくさんの人が奴らに詰め寄った。けれど、結局奴らの22世紀のテクノロジーを説明するのは不可能だという言い分を信じるしかなかった。実際に理解できるはずがないのだし、仮に、もしあの道具がカメラだったところで、僕たちにはもう、他の選択肢など残されていないのは間違いなかったからだ。死ぬことを選ばない限りは、僕たちは風呂に入ればトイレもするし、独り言で誰かの悪口だって言いながら、生きていくしかないのだから。
そして最後に、僕の同級生であるハスミサヤカが手を挙げた。
「質問してもいいですか?」
「どうぞ」
「存在を消される、というのはどういうことなのでしょうか?殺されるということですか?」
「殺されるというのとは少し違う。存在そのものが、元からなかったことになるのだ。」
「なかったこと、ですか?」
「そうだ。禁止ワードを他人に伝えようとする人間を発見したら、私はソノウソホントを付けてこう言う。『○○の存在は消える』と。すると、瞬時にその人間はこの世から消え去り、その人間に関する記憶や、存在を示す物もこの世から消え去ってしまうのだ」
男はあらかじめ用意していたのか、新聞を懐から出して広げ、ある記事を指差した。
「多くの皆さんは、この事件をご存知だろう。2ヶ月前に起きた1家6人が惨殺された事件だ。この犯人は未だ捕まっていない」
男はくちばしを口に付けた。
「この事件の犯人の存在は消える。そして、ソノウソホントによって消えたことを、ここにいる人間だけが知っている」
くちばしを外して男は続けた。
「これで、皆さんは今起きたことを知っているが、世界はすでに犯人が元からいなかった世界になっているのだ。新聞をもう一度良く見て欲しい」
もう、驚く感情すら起こらなかった。さっきまで、事件を報じていたはずの紙面が、『特集 パンダが立った!』になっているのだ。誰もが最早驚きの声を上げることもなく押し黙っていた。
「おわかりいただけたかな?お嬢さん」
「ありがとうございました。それと、もう1つ伺ってもいいですか?」
「どうぞ」
体育館中の視線を集めても身じろぎもせず、サヤカは言った。
「そのくちばしを付けて言ったことはどんなことでも実現されるんですよね?」
「ああ、どんなことでも、だ。正直なところ、これは22世紀でも信じられない力で、セワシ博士のとある実験中に偶然に発見されてしまったものなのだ。こんな道具があることを知っているのは22世紀でも数えるほどしかいない」
すでに2人の声以外は沈黙が支配している体育館が、サヤカのその質問によって全てが凍りついたかのような静寂に覆われた。
「じゃあ、どうしてそれを付けて『世界が平和になる』と言わないんですか?」